
医療機関の人材確保に「SNS」 川崎市医・プッシュ型で情報提供
川崎市医師会は、会員医療機関の人材確保を目的に、SNSを活用した独自のマッチングサービスに取り組んでいる。LINEの友だち登録やインスタグラムのフォローなどをした医療人材に求人情報をプッシュ型で提供し、川崎市医の医療人材募集ページへのタイムリーなアクセスを促す。2024年4月からの1年間で、LINEの登録数は221件、インスタグラムのフォロワー数は516件。人材募集ページへの総アクセス数は、25年1月末までで2万1499件に上った。今後は関係団体と連携し、看護師など医療人材の転職先として想定される、訪問看護ステーションなどの求人情報も掲載していく考えだ。
川崎市医は23年10月、医療人材募集ページを市医の公式サイトに開設した。育児や介護を行う人材が重要視する勤務地が一目で分かるよう、求人を行う医療機関の場所を示した地図も掲載。24年4月からは、求人情報のさらなる周知とマッチングを図るためSNSを開設した。
●背景に紹介料の高騰や採用のミスマッチ
川崎市医の岡野敏明会長は、同事業を始めた背景として、とりわけ看護師の人材紹介料の高騰や、採用のミスマッチに言及する。「医療機関が求人誌などで募集をかけても、応募がほとんどない代わりに人材紹介業者から頻繁に連絡が入る。診療所の場合で、おおむね年収の30%にも上る紹介料を払って看護師を確保しても、一定期間を過ぎた後に辞めてしまえば、再度、多額の費用を負担して別の看護師を確保しなければならない」。300床規模の病院で、人材紹介業者に年間約4500万円を支払っているケースもあるという。
「こうした財源は、全て診療報酬や介護報酬だ」と指摘し、会員医療機関が人材確保にかける労力・経済的負担を軽減するため、同事業に取り組んだとした。
SNSの活用などにより、24年4月~25年1月における医療人材募集ページへの総アクセス数は2万1499件。同サービスによって人材確保に至ったとの報告を、少なくとも10件受けている。求人情報へのアクセス数をさらに増やすため、会員医療機関の求人情報に加え、看護師などが転職先として想定する訪問看護ステーションや保育園といった求人情報も掲載していく。
岡野会長は、「看護学校を卒業したばかりの看護師が、すぐに人材紹介業者に登録することは、すでに医療・介護現場で働いている看護師の処遇改善を阻む要因にもなっている」と指摘。看護教育の段階で、こうした実態を説明する必要があるとの考えも示した。(藤田 昌吾)